湖国の食文化を伝えるニゴロブナ

ネジレモ

ニゴロブナは、琵琶湖だけに分布する固有種で、普段は北湖の沖合で生活していますが、4〜6月の産卵期になると大きな群れをつくって移動し、内湖や入り江のヨシ帯などに産卵します。また、卵から孵化した稚魚はヨシ帯の中で大きくなり、やがて少しずつ沿岸域から沖合へと移動して、冬になると湖の深いところで暮らすようになります。
ニゴロブナは、滋賀県の伝統食である鮒寿司の材料としても知られています。産卵期の子持ちのニゴロブナのエラぶたから内臓だけをとり出して塩に漬け込み、やがて気温が高く、発酵に適した土用の頃に樽から出して塩抜きをし、ご飯を詰めて再び漬け込みます。その調理方法は、自然から学び取った知恵と湖の恵みを大切にする近江の人々の心から生まれた、かけがえのない食文化でもあります。
しかし、近年、ニゴロブナの漁獲量は減少傾向にあり、滋賀県水産課では、資源回復に向けて、外来魚などの食害に遭いにくい全長22mmサイズまで育てた稚魚を大量に放流する事業などをスタートしています。さらに、琵琶湖やその周辺では官民が一体となって内湖の再生を進め、ヨシ帯やビオトープの造成など、さまざまな活動も積極的に行っています。このような取り組みのひとつひとつが着実に実り、ニゴロブナはもとより、琵琶湖の豊かな生態系そのものの保全に役立つことを願います。

ニゴロブナ:プロフィール

コイ科
体長20〜40cm。体幅が厚く、頭が大きく下あごが張っている。
名前の由来については諸説あるが、顔つきがゲンゴロウブナに似ていることからニゴロブナの名がついたという説が有力である。
また、ニゴロブナは古くから滋賀の人々の伝統食に欠かせない湖魚であり、その代表的な料理である鮒寿司は、1998年に県指定無形民俗文化財となった。
取材協力:琵琶湖博物館


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