水田をめざす琵琶湖のナマズ

 コハクチョウ

かつて琵琶湖の周りには、多くの湿地帯が広がり、そこにあった水田は、水によって湖とつながっていました。琵琶湖の魚たちは沼や水田、内湖の間を自由に行き来し、卵を産み、そこでふ化した仔魚たちは琵琶湖へと還り、成魚となると再び、水田へと上り繁殖していたのです。しかし、このような魚の行動も圃場整備が進み、湖岸堤が整備されると水田と琵琶湖が分離され、途絶えることとなりました。
彦根市薩摩町の水土里ネット愛西(愛西土地改良区)では、平成13年から約2.5ヘクタールの区域において川と農業用排水路と琵琶湖をつなぎ、昔のように水田に魚を呼び戻すプロジェクトをスタート。昨年は水田と排水路の水面がほぼ同じ高さとなるように魚道施設を改良したところ数多くの魚が遡上、産卵し、約 10万匹の仔魚が琵琶湖へと還って行きました。遡上する魚の代表格はナマズやフナ、コイで、なかでもナマズは水田を好み、魚道を勢いよく上る姿があちこちで見られました。水土里ネット愛西では滋賀県環境こだわり農産物の生産にも取り組み、田に放流したニゴロブナとともに育った米を売り出すなど、水田魚類の再生を軸にさまざまな活動を地域ぐるみで展開しています。

ナマズ・プロフィール

体長50cmあまりで、日本のほぼ全土に分布。琵琶湖内では、主に沿岸部のヨシ・水草帯などに潜み、生活している。
本の口ひげをもち、ウロコはなく、全身を粘液に覆われている。小魚やエビなどをエサとする肉食魚で、感覚器官が発達し、真っ暗な中でも自由自在に行動する。
写真提供:滋賀県水産試験場
取材協力:水土里ネット愛西(愛西土地改良区)「魚のゆりかご水田プロジェクト」に取り組む。


もどる進む