シベリアからの優美な冬の使者、コハクチョウ

 コハクチョウ

琵琶湖には、毎年10月下旬になるとシベリアからコハクチョウがやって来ます。その数は、湖全域が鳥獣保護区に指定された1971年から年を追うごとに増え、今日では約300羽が飛来します。しかし、広い琵琶湖の中でもコハクチョウが生息できる場所は限られ、北部の湖北町やびわ町がその中心となっています。琵琶湖にやって来たコハクチョウは、湖の水草をエサとしますが、最も多いカナダモ類は食べないため、水草が少なくなると水田で落ち穂や、刈り入れ後に再び実った二番穂を食べるようになります。しかし、近年は米から麦へと切り替わる田も多く、エサの確保は容易ではありません。さらに、コハクチョウは体が大きく、長い滑走路を必要とするため、3反1枚(30m×100m)の水田が何枚も連続しなければ降り立つことができず、エサ場となる水田が虫食い状に残っていても利用価値がないものとなります。
現在、新しい取り組みとして湖北の早崎干拓地では、かつての内湖の復元が進められ、昨秋も多くのコハクチョウが入り、夏にはカイツブリやオオバン、カルガモなどの野鳥がヒナを育てる姿が見られました。このような試みによって、かつての琵琶湖の豊かな環境を取り戻すことができれば、コハクチョウをはじめ数多くの野鳥が、より身近に観察できる日が来ることでしょう。

コハクチョウ・プロフィール

一般にハクチョウと呼ばれる鳥は、オオハクチョウとコハクチョウ、コブハクチョウに大別されるが、琵琶湖に生息するのは主にコハクチョウである。 体長約120cm、翼の大きさは190〜200cm。
シベリア最北端のツンドラ地帯を主な生息地とし、 6、7月に産卵し、3ヶ月ほどで飛び始めるヒナを連れ、越冬地へと飛来する。
警戒心が強く、エサ不足とともにプレジャーボート等の存在も生息環境のひとつの問題となっている。
写真提供・取材協力:湖北野鳥センター


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