琵琶湖のフナと下新川神社「すし切り神事」

 すし切り神事

現在、琵琶湖には約60種類の魚が生息し、そのうちの12種が琵琶湖でしか見ることのできない貴重な固有種です。さらに、その中でも、とくにコイ科魚類は、魚の固有種の半数以上を占め、世界でも有数の古代湖である琵琶湖とともに、悠久の歳月をゆっくりと歩みつづけてきました。
太古より琵琶湖のほとりで暮らす人々にとってフナやモロコなどコイ科の魚は、大切なたんぱく源であり、近江の食文化を代表するフナずしもまた、固有種のニゴロブナを用いて作られることは、広く知られています。
毎年、5月5日に守山市の下新川神社では、国の選択無形民俗文化財であるケンケト祭りが開かれ、そのなかで、すし切り神事が執り行われます。この起源は約2千年前にさかのぼり、豊城入彦命が西近江の海賊を征伐し、当地に立ち寄った際、村人が琵琶湖でとれたフナを塩漬けにして焼いた料理を献上し、その労をねぎらったことから始まったとされています。神事は、その年に元服した男子(長男)の中から選ばれた2人の当番が、古式に則り、裃姿で主役を務めます。神前に供えられるまな板の上のフナずしを長いはしと包丁を使って切り分ける場面がクライマックスで、緊張する切り役の若者に向けて観衆から発せられるヤジもこの祭の名物のひとつ。まさに、太古よりつづく琵琶湖のフナと近江の人々との強い結びつきを物語る、貴重な神事です。

すし切り神事

正式には「近江のケンケト祭り」。5月5日の正午頃に「すし切り神事」が行われ、その後、「かんこの舞い」や「長刀踊り」が奉納される。

問い合わせ先:077-582-1131(守山市観光協会)
取材協力・写真提供:守山市


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