第１回 地域の安心安全のために ～由良川の水災害と対策～

浸水被害を減らすための取組みは、安土桃山時代の明智光秀以来、長年にわたり続いています。

明治時代には福知山大堤防が造られ、昭和22年から国による河川改修が本格化し、綾部市や福知山市の市街地周辺での築堤や下流部での大規模な河道掘削などが行われてきました。

近年では、洪水により大きな被害が発生したことをふまえて、次のような対策も実施しています。

平成16年10月台風23号は、福知山地点で戦後第2位（当時）の水位を記録した大洪水で、下流部で役場などの防災拠点や多くの家屋が浸水被害を受けました。

この被害を受け、「由良川下流部緊急水防災対策」として、下流部の地域を対象に由良川の洪水で家屋などが浸水しないよう、輪中堤や宅地かさ上げの対策を実施しました。



狭溢な地形で平坦地が狭い下流部では、通常行われている連続堤防方式による治水対策では、わずかな平地で利用される農地をつぶすことになるため整備が行いにくく、また築堤延長も長く、治水効果が発揮されるまでに長年の歳月が必要でした。

そこで、地形特性に合わせ、緊急かつ効率的に住まいを水害から守る「輪中堤」と「宅地かさ上げ」を概ね10年で整備する、「由良川下流部緊急水防災対策」に取り掛かりました。

整備は下流部の16地区を対象に「輪中堤」による整備を10地区、「宅地かさ上げ」による整備を10箇所で実施しました。事業は平成16年12月に着手し、住民説明会で地元の方々のご意見に耳を傾け、賛同を得ながら、堤防の用地となる土地の買収に取り掛かりました。また関係機関の地域整備計画や道路改良事業などの関連事業とも連携を図りながら、下流部のインフラ整備を行いました。

平成25年台風18号では約1,600戸余りの家屋が浸水しました。
この被害を受け、「由良川緊急治水対策」として、堤防整備や宅地かさ上げなどの対策を集中的に実施しています。
平成25年台風18 号による大きな洪水被害をふまえ、平成16年の洪水と2度浸水した区間を対象に、概ね１０年で整備する「由良川緊急治水対策」を実施しています。

■輪中堤と宅地かさ上げ
集落が散在する地区では、短期間で効率的に浸水被害を防ぐ対策として、輪中堤の整備や宅地かさ上げを実施しています。

■連続堤と河道掘削
家屋が連続し市街地が形成されている綾部市から福知山市にかけては、連続堤を整備しています。また、洪水時の由良川水位を下げるため、川の土砂を取り除く河道掘削も実施しています。

福知山市街地は山地と由良川本川の間に挟まれた低平地に位置しており、由良川本川の堤防高T.P.＋21～24mに比べT.P.＋15～16mと低い地盤高となっています。昭和50年以降、水田や山地等で宅地化が進み、市街化の進展とともに、流域内の保水力が低下しています。
これまで外水氾濫の対策だけでなく、関係機関と連携して市街地の内水氾濫への対策も行ってきましたが、平成26年8月豪雨では福知山市街地を中心に広く浸水し、約4,500戸が被害を受けました。

この被害を受け、福知山河川国道事務所、京都府、福知山市は「由良川流域における総合的な治水対策協議会」を設立し、関係機関とさらに連携を強化し総合的な治水対策を実施しています。

■福知山河川国道事務所は、市街地にたまった水をより多く排出できるよう、排水ポンプなどを増強しています。

■京都府は、弘法川・法川において多くの水が流せるように改修するとともに、一時的に水をためる貯留施設や排水ポンプなどを整備しています。

■福知山市は、市が管理する排水ポンプの増強や雨水貯留施設の整備などを実施しています。また、各戸・事業所の耐水化や雨水貯留設備の設置を促進しています。

これらの対策によって平成26年8月豪雨と同程度の大雨が降ってもおおむね床上浸水による被害が解消されます。