第7回委員会について
開催概要
- 日時
- 平成24年12月3日(月) 14:00~16:00
- 場所
- 平城宮跡資料館 小講堂
- 出席委員
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委 員 6名(欠席5名)
行政委員 11名
検討資料
配布資料リスト
議事要旨
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議事
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(1)復原建造物の構造検討
復原建造物の構造検討について、回廊の構造部分ごとの荷重、回廊のゾーンごとの地耐力と建物重量、南門・東楼・西楼の場所ごとの地耐力と建物重量の比較検討について説明が行われた。
この意見に対し事務局より次のように回答した。また、上記の意見を参考に今後の検討を進めることとなった。
- 現在も既に盛土があるので、もう少し細かく軟弱地盤のゾーンを分けその境界を見極めたいと思う。
- 上部構造の復原原案が決まっておらず、現段階では地盤を大きく3 つのゾーンに分けただけだが、南面のゾーンⅡをゾーンⅡ-1、Ⅱ-2、Ⅱ-3 と、さらに分割することを今後追加で検討していきたい。
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(2)築地回廊の版築に関する構造実験についての報告
既に行われた施工試験の計画、概要、施工手順等の報告およびこれから行う振動台実験の概要について説明が行われた。
各委員より次のような質問・意見があった。
- 施工工程について、1 日目が75 ㎜、2、3 日目が150 ㎜と倍の数値にしているのは意味があるのか。
- 搗く回数と強度を一定にするため、遊び心も入れながら歌を歌いリズムをとって作業することで、将来的に作業風景を公開する際に、宣伝や集客力につながるのではないか。
- 実際の施工では、長大な面を1 層ずつ積み上げるわけにいかず部分施工していくと思うので、接合面の補強についても、実験しながら検討していただきたい。
- 帯で全体を締め込む補強方法案について、添柱を付けることになった際は、添柱位置で施工すると外観がよくなるのではないか。
- 土壁だとムギワラやスサを混入するが、版築は土と塩化マグネシウムと消石灰だけを混ぜるのか。
- この界隈で現在または過去に使われた版築用の土は、大体が天理市福住産あるいは産地不明なのか。
- 経験値に即した土の配合や施工は、再現性や定量化は難しいと思うが、調合内容など詳しい記録を極力残していただきたい。
- 版築施工に関わる定量化のための過去の実験データはあるのか。他事例の実験データもあるとよい。
- 奈良文化財研究所で発掘調査している高松塚古墳、キトラ古墳、藤原宮跡の大極殿院南門の基壇なども参考になる。それらに使用されている土は単一ではなく黒っぽい土と黄色い土を互層に積んで 搗き固めており、本当の古代の古墳や宮殿建築の基壇の工法である。高松塚古墳などは版築の打継面の跡が綺麗に残っており、どう搗いたかよくわかる。スサなどは一切入っておらず、湿気抜きの ためにムシロなどを敷き、軽く叩いて湿気を抜いてから搗く工法など、考古学的にも新たな事例が 出ているので、その辺も参考にしながらより忠実に版築を再現したらどうか。
- 土塀を一番忠実に再現していると思われる法隆寺では、木枠を作り版築を人手で搗いている。耐久性や現状など参考になるのではないか。
- 推定宮内省の実験がどのような根拠に基づき実施されているのかよくわからないが、本当に石灰やマグネシウムを入れたのか、基本的なところから古代の版築を考え直す必要があるのではないか。
- 版築を人力で搗き復原している事例もあるので、ぜひ参考にしていただきたい。法隆寺では搗き棒が今回の搗き棒のタイプと似ているが、もう少し太くて重かったような気がする。持ち上げて手を離すとかなりの強さで落ちていくので、搗く際は持ち上げるだけの作業になる。志波城では、先が 丸い形の搗き棒で2 段構造のものだった。
- 打継面をつなぐ工法について、ムシロを敷く工法などを含めその有無をぜひ確認していただきたい。
- 志波城の版築施工は、人力でも作業したが後はランマーで作業していた。両者の強度がどう異なるか気になる。
- 版築は3m ぐらいのスパンで搗くと思うが、1m50 ㎝と3m で強度が違うのか気をつけていただきたい。
- 「突固めによる土の締固め試験」というのがJIS で定められており、どれくらいの高さから、重さ何㎏で何回搗くか決まっている。そういう形で今回実験された内容をもう少し精査いただきたい。
- 最適含水比がわかるとよい。30~34%は非常に低い値で、強度自体が水分または石灰とマグネシウムの化学反応に本当に関係しているのか確認する必要があるのではないか。
- 長状の線状構造物は不同沈下によるたわみでクラックが入る可能性が高いと思うので、コンクリート構造物のように、版築の間に打継目のようなものを何m かごとに入れていくのかも検討する必要がある。以上も考慮し、本当に消石灰とマグネシウムを入れて調合すると強度が出るからよいのか、 多少弱くてもフレキシブルに対応する構造物のほうがよいのか、検討の余地があると思う。
- 今までに版築の築地塀、古墳、基壇のデータなどで、土壌分析などのデータはあるのか。
この意見に対し事務局より次のように回答した。また、上記の意見を参考に今後の検討を進めることとなった。
- 施工工程については、1 日目は前日の大雨で半日分作業ができず1 層75 ㎜しか作業できなかった。
- 搗く回数については、代表者の回数をカウンターで数えた。回数を管理値にするのは大変なので、リズムを合わせる方法について、来年度に計画している施工実験で検討したいと思う。
- 15~20 年前に推定宮内省で行われた版築の復原実験で、最終的にあまり劣化せず一番姿形がよく残っていた版築に使用されていた配合が天理市福住産の土と塩化マグネシウムと消石灰と水だけの配合だったため、今回の実験でもこの配合を選択した。
- 少し前は違う場所の土も使用したようだが、大量の砂や土を1 ヵ所から産出できるのが現在では天理市福住しかなく、また土の性状がとてもよいということで、天理市福住の土を採用した。
- 振動実験は千葉県で行うが、土を奈良県から運び千葉県で版築を製作することを考えている。
- 配合や施工についての資料があまりなく、土と石灰量の記録はあるが、含水量と強度の記録はほとんどなかったため、今回は再現性の問題から本物を作り本物から切り出す実験を行った。
- あくまでも平城宮跡内で、過去に施工した版築の情報を基に実験している。
この意見に対し行政委員より次のように説明があった。
- 高松塚古墳では、すべて版築で施工するために行った硬度計による硬度試験のデータは全てあると思う。土壌分析は版築の分析で行っていると思う。古墳ではあるが参考にはなると思う。土壌の本来の成分がわかれば一番よいので、そのようなデータがあるか今後注視していただきたい。 日目は前日の大雨で半日分作業ができず1 層75 ㎜しか作業できなかった。
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(3)管理・活用に伴う施設整備について
管理用施設、展示用施設、通路等について、図面を用いながら整備方針と検討事項の要旨について説明が行われた。
各委員より次のような質問・意見があった。
- 動線は南門または南西の脇門から入ることを考えているのか。 日目は前日の大雨で半日分作業ができず1 層75 ㎜しか作業できなかった。
- 斜路のスロープを東西両側に設置するとかなり目立つと思うので、回廊側に引き付け、亀腹の上にスロープで乗っていくような違和感のない形などにできないか。
この意見に対し文化財保存技術協会より次のように回答した。
- 今回の提案は、身障者用のスロープ設置位置と形を最小限にした考え方であり、一般見学者は南門から、身障者はスロープが目立ちにくい西側の手前からの動線を考えている。西楼正面の扉を開けるかは今後の課題になると思う。
- 斜路のスロープについては、復原原案で亀腹の有無や形が決定していないが、スロープが長すぎ踊場を設置しなければいけないため亀腹の長さくらいになってしまう。亀腹がある状態になっても回廊側にできる限り寄せる方法も考えていかなければいけないと思っている。
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(4)奈良文化財研究所による第一次大極殿院復原原案の研究状況の報告
奈良文化財研究所で検討中である事項と主な課題について説明が行われた。
各委員より次のような質問・意見があった。
- 隅木蓋瓦は楼からだけ出土され、門では出土していないのか。
- 隅木蓋瓦は複数箇所から出土しているのか。またそれは同一個体または寄せ集めたものか。
この意見に対し事務局より次のように回答した。
- 隅木蓋瓦は、楼閣の側回りの掘立柱の抜取穴から出土している。門は基壇の上に何もなく遺物が出土するところはほとんどないので、確実に上部構造につながるような遺物はない状態である。
- 隅木蓋瓦は、ほぼ東楼の抜取穴または西楼の抜取穴から出土している。いずれも破片であり間が抜けていたりしているが、少なくとも複数個体が出ていることは間違いないと思われる。
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(5)その他
事務局より、3 月には平城宮跡及び藤原宮跡等の保存整備に関する検討委員会、3 月末には文化庁の復元検討委員会で、本検討委員会で検討した整備案を諮っていきたいと考えているため、今年度中に次回委員会を開催したいとの連絡を行った。
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以上
各委員より次のような質問・意見があった。