第10回委員会について
開催概要
- 日時
- 平成26年4月17日(木) 14:00~16:30
- 場所
- 公益財団法人 文化財建造物保存技術協会 地下会議室
- 出席委員
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委 員 9名(欠席2名)
行政委員 7名
検討資料
配布資料リスト
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議事次第
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出席者名簿
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第9回第一次大極殿院建造物復原整備検討委員会 議事概要
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資料1-1
構造補強における前提条件の整理
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資料1-2
各建物の構造補強案
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資料1-3
各建物の構造補強案の比較
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資料1-4
仕上げの仕様から見た整備項目
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資料2-1
版築による復原整備範囲について
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資料2-2
東面回廊の整備高さについて
議事要旨
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議事
この報告に対し委員より次のような回答があった。
- 対称性を非常に重要視したゆえの懸念だったが、パノラマ写真と現地確認により、思っているほどの懸念はなさそうである。
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(1)第一次大極殿院復原原案について
前回の委員会以降の検討事項と実施設計に向けての課題について、①回廊・地形、②南門、③東西楼、④瓦・磚、⑤彩色・金具の5項目に分け説明が行われた。
各委員より次のような質問・意見があった。
- 東西楼の復原原案の検討にあたり、景福宮慶会楼が参考事例として重要な役割を果たすようだが、1867年再建の建造物から10世紀前後の様式を着実にたどれるのか。
- 景福宮慶会楼に柱間装置がなく開放的なのは、建物に面した池を眺めるためなど、東西楼と同じ宮殿の中にある楼閣ではあるが同様の機能を持っているかやや気になる。
この意見に対し事務局より次のように回答した。
- 東西楼の発掘遺構自体が日本でも非常に特殊で、柱の掘り方の深さから楼閣と考えている。現存する数少ない中国の宮殿や故宮なども研究した結果、参考にできそうな楼閣が景福宮慶会楼と昌徳宮宙合楼しかない。
- 東西楼の機能は、景福宮慶会楼も昌徳宮宙合楼も景色を眺める機能を持つと想定することができ、東西楼からも東西南北に山々が見えると思われるので、柱間の開放はそれらを眺める機能と想定してもよいのではないかと考える。
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(2)平城宮跡歴史公園第一次大極殿院建造物復原整備案について
復原原案に基づき、各建物の構造補強案および仕上げの仕様から見た整備項目の2点から説明が行われた。
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ア.各建物の構造補強案について
各委員より次のような質問・意見があった。
- 復原建造物は新築される建物であり、かつ周囲に一般の人々が通行または滞留する可能性もあるので、現行の建築基準法で想定している程度の構造安全性が必要である。
- 東西楼は、手間のかかる補強よりは、鉄骨フレームを入れるのが一番単純明快でよいと思う。
- 南門は、2階に補強の必要があるが、補強をし過ぎると1階への荷重が大きくなるので、制震ダンパ ーを入れる案は妥当であり現代風のスマートな補強だと思う。復原建造物は伝統工法のため本体の 構造評価が難しいので、制震ダンパーの施工にあたっては、ダンパーの強さ具合のバランスをスタディーし内容を詰めていく必要がある。
- 回廊の版築は、横に滑らせる力には強いが、転倒または途中で割れてはがれ壊れる可能性があるので鉄筋を仕込む補強案でよいと思う。
- 東西楼の小屋組にある束状の補強部材は、内部からは天井があり見えないので木材でもよいと思う。
- 東西楼の構造補強は少々やり過ぎのように感じる。海外の方々には既に整備された復原建造物の評 判が大変悪いので、これ以上刺激したくない気持ちがある。発掘遺構だけではわからない木造建造 物はしっかりした根拠や科学的検討が必要となるが、今回はそれが揃っていないので、復原というよりも1対1のモデルとして、あるいは復原は推定できる範囲に留め、例えば平面遺構表示を取り入れることも考えられる。これだと非常に正直な復原として海外の方々にもそれなりに納得してもらえるのではないかと思う。本日の議題は構造補強だが、構造補強と復原の厳密性は関連し明確に分けて検討できないと思うので、いずれも考慮した議論が必要である。
- 東西楼の復原原案は、本当に正しいのかという意見はあるが、発掘調査結果、出土遺物、文献など 現存遺構や学問的位置付けなどから考え尽くし、さらにこの建物を、安全性を確保しながら建てる ため補強案を検討してきた。これを議論し直すよりは、海外の方々にこれらの考え方や経緯を丁寧 に説明するほうが重要だと思うので、このまま検討を進めていただければと思っている。
- 一昨年の秋に開催されたICOMOSの会議前の非公式国際会議では、復原建造物に対して非常に重大な誤解が多くあり海外に対するプレゼンテーション不足を実感した。正しく理解してもらうため英訳した詳細説明文を作成するなどの努力も重要だと思う。
- 構造補強については、復原建造物が国宝または重要文化財の建造物に準ずるとすると、当初の建造物は後世に改造を受け現在に至っているので、現代において修理、復原、構造補強し、修理後の状態にすると理解すれば、今回も文化財の建造物の構造補強に準じた形ということで理解できる。
- 制震ダンパーの設置にあたっては、地震波が異なる内陸型と、今懸念されている大陸型を考慮し検討していだきたい。
- 復原建造物のプレゼンテーションにあたっては、建物細部だけではなく、立地、選地の考え方、ランドスケープ全体のなかの位置付けも含めることが非常に重要だと思う。特にICOMOS関係者に対しては説得力があると思う。
この意見に対し事務局より次のように回答した。また、上記の意見を参考に今後の検討を進めることとなった。
- 東西楼の小屋組にある束状の補強部材は、復原原案では当初入れていたが、上からの荷重が大きくなるので抜いていた。実際は入れたほうが構造が安定するので今回は入れている。材は木材でもよいと思うが、当初材と間違われないよう集成材でもよいと思っている。
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イ.主要な復原仕様についての報告
各委員より次のような質問・意見があった。
- 屋根瓦の色により全体に与える印象が大きく変わると思うが、黒色だったことは確かなのか。
この意見に対し事務局より次のように回答した。また、上記の意見を参考に今後の検討を進めることとなった。
- 第一次大極殿院地区から出土する瓦は、その他の場所から出土する瓦よりも黒いため、色調分析を実施し黒色という結論になった。黒色の着色方法を含め本来の色を研究したが結局わからなかった。
- 着色方法自体が本来と異なると、本来の色とかけ離れたものができてしまう場合もあり、あまりにも色調が異なるのは問題なので、その点は注意して検討していく。
欠席委員より事前に次のような意見があった。
- 東西楼は鉄骨フレームでよいが、なるべく目立たない色にしながらも、当初のものと誤解されない ようにする。2階に柱を立てざるを得ないのであれば、いっそ鉄骨にし、できる限り本数を減らし、見え方に配慮した工夫ができるとよい。
- 回廊の版築は鉄筋補強でよいが、できるだけ間隔をあけ、さらに鉄筋補強と厳正復原の範囲がわかるようにして欲しい。
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(3)文化庁復元検討委員会の報告
平成25年3月から平成26年3月にかけて開催された文化庁の復元検討委員会で諮られた、版築の復原実施可能範囲、築地回廊に開く門の配置、上部構造及び南門の上部構造、東西楼の上部構造などについて報告が行われた。
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(4)その他
平成26年度の工事予定について、本来工事に先立ち回廊基壇工事に着手、5月下旬頃から南面回廊の東半分に着手し、引き続き文化庁と現状変更協議を経ながら東面回廊の基壇工事にも着手していく予定であることが報告された。
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閉会
次回委員会に向け日程調整の連絡をさせていただく。
以上
議事に入る前に、前回の検討委員会において委員より意見があった東西回廊の高さの見え方について事務局より説明が行われた。