インフラメンテナンスの重要性
その道路や橋は大丈夫?
急速に進む道路インフラの老朽化、その現状と課題とは
1964年の東京オリンピックや1970年の大阪万博が開催された高度経済成長期に、わが国の道路や橋梁、トンネルといった道路インフラが急速に整備された。
それから半世紀以上が経ち、これらの道路や橋梁、トンネルの老朽化がどんどん進んでいる。そこで急務なのが老朽化対策だが、いくつかの課題もある。
私たちの暮らしに身近な道路や橋梁、トンネルの安全がいかに守られるべきか。その現状や課題ととともに先進のメンテナンス技術についても紹介する。



建設後50年越えの橋や道路が急増
2012年に発生した中央自動車道笹子トンネルの天井版崩落事故のニュースに、当時多くの人が衝撃を受けたことだろう。今日、私たちは、1960年代・70年代に集中的に整備された道路インフラが一斉に老朽化するという社会課題に直面している。例えば、近畿地方整備局管内における建設後50年以上経過している橋梁は、2024時点で44%であるが、10年後の2034年には67%になる見込みである。


国土交通省は、笹子トンネルの事故を受けて2013年を「社会資本メンテナンス元年」と位置づけ、2014年度から道路管理者に、全ての橋梁やトンネルなどの道路構造物について5年に1回の定期点検の実施を義務づけた。
2023年度をもって2巡目の点検を終えているが、橋梁を例に取ると、1巡目の点検(2014~2018年度に実施)で、措置を必要としない判定区分「Ⅰ 健全」や「Ⅱ 予防措置段階」と判定された橋梁が、2巡目の点検(2019~2023年度に実施)では3%が「Ⅲ 早期措置段階」に、さらには0.01%が「Ⅳ 緊急措置段階」に移行しており、老朽化が着実に進行していることが分かる。
2023年度をもって2巡目の点検を終えているが、橋梁を例に取ると、1巡目の点検(2014~2018年度に実施)で、措置を必要としない判定区分「Ⅰ 健全」や「Ⅱ 予防措置段階」と判定された橋梁が、2巡目の点検(2019~2023年度に実施)では3%が「Ⅲ 早期措置段階」に、さらには0.01%が「Ⅳ 緊急措置段階」に移行しており、老朽化が着実に進行していることが分かる。

また、近畿地方整備局管内にある約10万の橋梁のうち、約9割が地方自治体が管理しているものになり、地方自治体の負担が大きくなっている。

戦略的かつ効率的に道路メンテナンスを推進する組織の誕生
こうした社会的状況を踏まえて、2020年4月に設置されたのが「近畿道路メンテナンスセンター」である。役割は大きく2つ、「老朽化対策」と「自治体支援」である。
1つ目の老朽化対策として、近畿地方整備局管内の直轄国道に架かる橋梁など点検や健全性診断を行うほか、蓄積したメンテナンスデータの管理・分析によって劣化予測や最適な維持計画の立案、さらには点検支援技術の活用など、道路メンテナンスの高度化を進めている。
1つ目の老朽化対策として、近畿地方整備局管内の直轄国道に架かる橋梁など点検や健全性診断を行うほか、蓄積したメンテナンスデータの管理・分析によって劣化予測や最適な維持計画の立案、さらには点検支援技術の活用など、道路メンテナンスの高度化を進めている。


2つ目には、地方自治体に向けて道路メンテナンスに関する技術相談や、職員向けの講習会などの技術支援を行うもので、自治体が管理する橋梁などのメンテナンスにおいて技術力を要するものについては、現地調査や直轄診断としった技術的支援も実施している。


ドローンやロボットといった点検支援技術の活用
点検を必要とする橋梁やトンネルが数ある中で、近畿道路メンテナンスセンターでは点検支援技術を活用して、効率的に点検を行っている。
例えば、橋梁点検では、カメラの撮影画像からひび割れをAIで自動検出しCAD図に変換する技術や、ドローンを使って橋脚周りや溝橋の状態を把握する技術なども活用している。
また、トンネル点検でも、AIを用いた打音解析による診断システムや高画質カメラと高精度レーザーを使って通常走行しながらトンネル内部の変状を撮影・判別できる技術を使用している。
さらに、自治体支援にも活用できるVR(バーチャル・リアリティ)を活用した橋梁点検疑似体験ツールなど、DXの進展が道路メンテナンスの効率化や技術力向上に貢献するものと期待されている。
例えば、橋梁点検では、カメラの撮影画像からひび割れをAIで自動検出しCAD図に変換する技術や、ドローンを使って橋脚周りや溝橋の状態を把握する技術なども活用している。
また、トンネル点検でも、AIを用いた打音解析による診断システムや高画質カメラと高精度レーザーを使って通常走行しながらトンネル内部の変状を撮影・判別できる技術を使用している。
さらに、自治体支援にも活用できるVR(バーチャル・リアリティ)を活用した橋梁点検疑似体験ツールなど、DXの進展が道路メンテナンスの効率化や技術力向上に貢献するものと期待されている。



メンテナンスサイクルの構築という使命を受けて
安全に利用できるものと信じている身近な道路インフラの健全性を守るためには、道路や橋梁、トンネルなど道路構造物の定期的な点検や診断といったメンテナンスは不可欠なものであり、私たち一人ひとりも決して無関心ではいられない。
近畿道路メンテナンスセンターは、引き続き道路構造物の「点検→診断→措置→記録→点検」というメンテナンスサイクルを確実に構築するため、近畿地方整備局管内の直轄国道における橋梁、トンネルの点検や診断、修繕計画の立案を行うとともに、各施設のデータベース管理と分析を実施するほか、自治体に向けても豊富なノウハウを生かした地方自治体の技術支援を行っていく。
近畿道路メンテナンスセンターは、引き続き道路構造物の「点検→診断→措置→記録→点検」というメンテナンスサイクルを確実に構築するため、近畿地方整備局管内の直轄国道における橋梁、トンネルの点検や診断、修繕計画の立案を行うとともに、各施設のデータベース管理と分析を実施するほか、自治体に向けても豊富なノウハウを生かした地方自治体の技術支援を行っていく。

