国土交通省地方整備局ロゴ 近畿地域の下水道ビジョン 下水道イメージ
国土交通省 近畿地域の個性を生かし、次世代によりよい 水環境を引き継ぐ下水道を目指して
はじめに
「近畿地域における下水道ビジョン」の構成
策定にあたって
近畿地域の概況
近畿地域の特色
人と水との関わり
近畿の下水道の現状と課題
下水道ビジョンの理念
下水道ビジョンの視点
近畿地域の下水道整備の将来像
将来像実現に向けた4つのプロジェクト
プロジェクト1:快適・安全
プロジェクト2:再生・保全
プロジェクト3:リサイクル・地球環境保全
プロジェクト4:住民協働・流域連携
ご意見と回答
近畿地域の概況:3.近畿の下水道の現状と課題
近畿の下水道整備は、今日まで着実に進めてられてきましたが、
まだ整備途上です。


 近畿地域の下水道は、都市部を中心に急速に整備され、人々は快適な暮らしを得てきています。また、水環境の悪化に対して早急な改善が必要との観点から、近年、下水道施設の高度処理化※3に取り組んできた結果、少しずつではありますが水環境は改善しつつあります。
太閣下水
【図−5】太閣下水
■1. 汚水処理の普及

 近畿の下水道は、大阪市の太閤下水※4のように古いものもありますが、近代の下水道は大阪市の明治27年着手以来、約百年の歴史となっています。また、昭和9年に京都市の吉祥院処理場が供用し、これ以降各地で処理場建設は進みました。

 また、昭和40年に全国初となる都道府県が設置・管理する大阪府寝屋川流域下水道※5が事業着手され、昭和45年には大阪府安威川流域下水道中央処理場が万国博覧会にあわせて全国初の流域下水処理場として供用開始しました。

 しかし、殆どの市町村は昭和40年以降に下水道に着手しており、まだ30年余を経過したに過ぎません。

 近畿の下水道の整備状況は、平成15年度末までに2府5県358市町村のうち277市町村で処理を開始しています。下水道の処理人口普及率※6は全国の66.7%に対して79.7%、他の汚水処理(農業集落排水、合併浄化槽など)を含めた汚水処理人口普及率※7では全国の77.7%に対して87.4%と高く、積極的に整備を進めてきました。

 しかし、いまだ汚水処理サービスを受けられていない人が近畿地域で270万人(12.6%)存在し、その殆どの人が地方部の中小市町村に居住しているため、その整備普及が重要な課題となっています。

近畿の下水道普及率
近畿の汚水処理人口割合の比較
※3) 高度処理化:下水道終末処理場から河川や海などへ放流される処理水のレベル(水質)を、標準的なものからより高度なものとするための施設建設もしくは改造のこと。有機物や浮遊物質(SS)のより効率的な除去が可能となるほか、窒素やリンの除去が可能となる。

※4) 太閤下水:豊臣秀吉が大阪城築城の際に建設した下水道。現在も、大阪市内で約20kmが使用されている。

※5) 流域下水道:2以上の市町村にまたがる下水道で都道府県が設置し管理する。市町村が設置・管理するのは公共下水道。

※6) 下水道処理人口普及率:下水道の普及状況を示す指標で、下水道を利用できる状態にある人口を行政人口で除した割合で示す。

※7) 汚水処理人口普及率:下水道のみならず、類似施設である農業集落排水(農林水産省)や合併浄化槽を利用できる状態の人口を元に算出した普及率。(図中の「コミプラ」とは正式にはコミュニティ・プラントといい、開発団地などで開発者等が設置する小規模の処理施設を指す。)

ページトップへ戻る
■2. 雨水対策
 下水道の大きな役割の一つである雨水対策については、近年の異常気象から多発する局地的な集中豪雨により、人口や資産が集中し土地利用の高度化が進む都市部において、地下街などの地下空間が浸水し被害を受けるなど、その被害ポテンシャルはさらに高まりつつあります。そういった都市を多数抱えている近畿地域においても、浸水被害の解消は優先すべき課題ですが、平成15年度末の都市浸水対策達成率※8は全国の51.2%に対して57.0%と若干上回っているものの、整備は遅れている状況にあります。
局地的豪雨による浸水の発生
【図−8】局地的豪雨による浸水の発生
※8) 都市浸水対策達成率:雨水対策を必要とする市街地等において、5年に1度の大雨が降っても浸水が起きないような対策(雨水の整備)が終わっている面積の割合のこと。
ページトップへ戻る
■3. 公共用水域の水質保全

 下水道整備により良くなりつつある水環境についても、大和川などの都市部を流れる河川や、琵琶湖、大阪湾に代表される閉鎖性水域では、環境基準※9が満足できていない状況にあります。

 近畿では、比較的早くから水質改善に取り組んでおり、河川や湖、海などの公共用水域の水質保全のために下水処理場への高度処理の導入を進めてきました。


高度処理人口普及率
【図−9】高度処理人口普及率
※9) 環境基準:国や地方公共団体が、環境基本法(法律)に基づいて設定する、公害防止対策を進めるための望ましい環境の質のレベル。河川や湖沼、海域で設定される基準としては、B O D やC O D (※11参照)がある。
 その結果、高度処理人口普及率※10は近畿以外の他地域に比べ高い水準になっていますが、それでも環境基準を満足できない水域が存在することから、今後のさらなる水質改善に向けた取り組みが必要です。

 さらに、近年、道頓堀川などで話題となっている、雨天時に合流式下水道※12の吐き口から公共用水域へ放流される未処理下水についても、早急な対策が必要となっています。

琵琶湖における水質の推移
【図−10】琵琶湖における水質の推移
雨天時の河川への放流状況 近畿の合流式下水道採用都市
【写真−11】雨天時の河川への放流状況
 
【図−12】近畿の合流式下水道採用都市
※10 ) 高度処理人口普及率:行政人口のうち、高度処理による処理が可能な人口の割合を指す。

※11) BOD,C O D :水質汚濁を示す代表的な汚れの指標で、数値が大きいほど汚れていることになる。B O D は、水中の微生物が汚れを栄養源として増殖・呼吸するときに消費される酸素の量を指し河川の汚れの指標に用いられる。C O D は、水中の非酸化性物質が一定条件のもとで酸化剤によって酸化されるのに要する酸素量で湖沼・海域の汚れの指標である。

※12) 合流式下水道:家庭のトイレや台所などから発生する汚水と、家屋の屋根や道路などに降った雨水を同じ1本の下水管で集め処理場へ送る下水道のこと。汚水整備と雨水整備を同時に行えることから、施工が容易かつ安価な利点を有しているため、早くから下水道に着手してきた都市に多く採用されている。しかし、雨天時には処理場へ下水(汚水+雨水)が到着するまでに、一定水量を超えた下水は下水管の途中に設けられた吐き口と呼ばれる施設から河川等へ溢れ出るため、衛生的・水質的に問題視されている。近年は、汚水と雨水を異なる下水管で集める分流式下水道が主流である。

ページトップへ戻る
■4. 下水道施設・資源の有効利用
 処理場やポンプ場は広大な敷地を有しており、市街地に残された貴重なオープンスペースとなっています。この空間を有効に活用することで、住民の下水道への関心を高めたり、地域にあったまちづくりに貢献することが可能です。 神戸市松本地区 大阪市平野下水処理場
 
【写真−13】神戸市松本地区
【写真−14】大阪市平野下水処理場
 一方、地球温暖化防止京都会議や世界水フォーラムなどの国際会議の取り組みに見られる近年の地球環境の保全に対する意識の高まりとともに、良好な地球環境を維持するため、下水処理水や下水汚泥を有効に活用し、循環型社会の形成に寄与していくことが必要となっています。
汚泥を利用したフラワーポット 汚泥を利用したレンガ 消化ガスを利用した発電
【写真−15】
汚泥を利用したフラワーポット
【写真−16】
汚泥を利用したレンガ
【写真−17】
消化ガスを利用した発電
ページトップへ戻る
■5. 下水道施設ストックの増大と老朽化

 早くから下水道に着手した都市部においては、処理場施設やポンプ場施設及び管路施設など膨大なストックを有しており、施設の老朽化が住民生活に大きな影響を及ぼす恐れがあることから、維持管理、改築・更新※13を効率良く行っていくことが重要となっています。
下水道管の破損による道路陥没   下水道管渠の設置と老朽化
【写真‐1 8】
下水道管の破損による道路陥没
(資料:東京都下水道局)
【図‐19】
下水道管渠の設置と老朽化
( 資料:大阪市都市環境局)
※13) 改築・更新:老朽化が進んだ施設を、新たに作り直すこと。
前の項に戻る ページトップへ戻る 次の項に進む