■近畿の個性・特色を最大限に
発揮しうるものに重点化する
近畿の下水道の処理人口は、20年前の昭和58年度末の950万人(普及率46%)から平成15年度末現在1,710万人(同80%)とこの20年間で760万人も増加しました。
しかし、都道府県構想※ 14による下水道整備人口はまだ270万人もの普及が必要です。数字上では、これまでの20年間の整備レベルからすれば容易に目標達成できるようですが、今後整備が必要な地区は集落が点在している箇所や人口密度が低く下水道整備量に比べ普及人口増割合が小さい箇所が残っているほか、財政力の低い中小市町村で事業着手まで至ってない状況があるなど、数字ほど容易に普及を進めることが難しく、課題は多いと言えます。
また、水環境の面から見ると、淀川本川(枚方大橋地点)の水質は、BOD で昭和57年に5.0mg/l程度でありましたが、平成13年では環境基準値の3m g/lを下回る2.0m g/lと改善してきています。これは、下水道の普及と高度処理の取り組みの成果と言えます。しかし、閉鎖性水域の琵琶湖・大阪湾においては、窒素、リンなどの富栄養化の原因となる物質への対策が十分進んでおらず、環境基準が達成されていません。
近畿は、全国的には高度処理等の取組みを先進的に実施していますが、まだまだ低水準です。
以上のことから、今後の下水道の進むべき方向としては、整備の概成した地域においては水循環の再生や水環境の創造、さらには循環型社会への貢献といった次なる課題に取り組んでいくという方針の転換が必要です。また、普及の遅れている地域ではこれらの考えを入れつつ着実に普及を促進させることが重要です。
この方針の転換は、近畿の個性・特色である「都市と豊かな自然環境の共生」を最大限に発揮し、近畿が持続的な発展を継続していくためには不可欠と考えられます。
※1 4) 都道府県構想:市町村内のどの区域をどのような汚水処理手法(公共下水道・農業集落排水施設・浄化槽など)で整備するかを明確に示したもので、都道府県が策定する(正式名称:全県域汚水適正処理構想)
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