第16回懇談会 (発表-1)治水と防災・減災対策 質疑応答

質疑応答

Q ため池の遊水機能について(中瀬座長)
環境問題は我々の目前まで迫っているという状況の中で、本日は、河川の流域の洪水の話等を豪雨災害の問題と治水と防災・減災対策について、人々の生活とコミュニティとの関係で発表していただきました。
加古川流域の東側にたくさんのため池がありますが、このため池の遊水機能について、これからどのように考えていけば良いのでしょうか。
A 治水面においては基本的に期待できません(川谷委員)

遊水機能を期待するのであれば、平常時にはため池を空にしておいて非常時に備える必要があるのですが、利水を目的とするため池はそういうわけにはいきません。ですから治水機能のシステムとしては期待できないと思っています。

Q 水田の遊水池的性格は?(田下委員)
水田に遊水池的性格は相当あったのでしょうか。
A 十分に機能しますが...(川谷委員)

基本的に農地は遊水池の機能を十分果たすと思います。ただ、農地として利用されている人々が冠水などの被害を受容できるかどうかの問題があります。

コメント

●住民側と国側の調整を始めなければ!(田下委員):
一つの川の治水・利水・防災・環境を流域で考える場合、国の省庁でも流域単位で考える必要があると思います。

どこまで受認できるかという住民側の考え方と、補償、その他の政策転換についての国側の考え方との摺り合せに真剣に取り組まなければならない時期にきていると思います。

●ため池を利用した洪水調整池には難しい問題が...(西川氏):
加古川沿川の低平地は、昔は水田で保水機能を持ち、水が溜まっても何の支障もありませんでしたが、現在は人家が建って都市化が進み、浸水被害が起きているという状況です。

現在でも田んぼの畦をとめれば遊水機能は持てると思いますが、利用の省力化の関係で機能を果たしていないというのが実態です。

開発に伴って必要となる洪水調整池整備にため池を利用することがありますが、原則として、ため池の利水容量と洪水調節容量は分離することになっています。ため池の水を利用する時期と洪水の時期が重なるためゲート操作が繁雑になり、洪水調節機能が発揮できずため池に期待することは難しいと思われます。

Q 洪水時に橋脚にひっかかる木はどこから来たのか?(中瀬座長)
洪水のときに橋脚にひっかかる木は、堤外側に生えていた植物が洪水で流されてきたのか、あるいは山林の間伐をせずに放っておいたところから流れてきたものなのかの見分けはつきますか。
A 間伐材や河道内の樹木(川谷委員)

間伐したまま放置された木が流れだしたものがあると思われます。ただ、下流側で橋に溜まっていたのは、川の中に生えていたものが洗い流されて引っかかったのではないかと思います。

コメント

●多自然型整備による植物が及ぼす影響(川谷委員):
河川環境を取り戻そうということで行われる多自然型整備によって植生が配置されていますが、問題となるのはそのメンテナンスです。

植物がどのように変化していくのかということを時系列的に把握していないこと、長期間に渡って手入れを行い続けねばならないこと、理想と考える状態を経済面でも維持できるかということに大きな問題があります。

長い年月に渡って植生の成長が上下流にどのような影響を与えるのかということを、的確に判断することが必要です。

●土石流による山村崩壊の原因(横山委員):
土石流における山村崩壊という大変な被害の主な原因には、森林部における間伐の遅れと、間伐はされていながらも有効利用されずに山に残されていたことです。そのため、間伐材が一挙に谷川を下って農山村を直撃したという被害も生じています。

●大堰による影響(池嶋委員):
加古川は、降雨後の水量は非常に多いが、1週間ほどすれば水がほとんどなくなってしまうように思う。

加古川に大堰ができてから、下流には泥がたくさん溜まって魚が棲みにくくなっています。

●バイパス水路を使った試み(岸本委員):
奈良県奥吉野十津川村のダムでは、バイパス水路を整備し、一定量を常に流して溜まった土砂をフラッシュアウトさせることにより、より自然に近い堆積状態に改善され、かなり効果を上げている例があります。

●加古川大堰の場合(那須委員):
加古川大堰は通常のダムと違い底から開けて放流します。出水のときには必ずフラッシュアウトと同じ効力が得られるので加古川大堰で土砂を止めてしまうということはあまりないと思います。

降雨時の出水が短期間で済み、すぐに流れなくなるという問題は、植林のあり方にも関係があるのではないかと思います。植林を行えば貯留機能が高まって治水安全度も上がると言われることがありますが、樹種にもよります。

森林の機能をどう高めていくかを検討する必要があります。

●森林の持つ機能(川谷委員):
いろいろな意味で相の豊かな森林であれば、豪雨のときにも一時的に浸透を通じて蓄えてくれるという森林の機能に期待ができるのではないでしょうか。

一方、渇水時には植物が水を吸い上げるために、森林が必ずしも川の流量を増やしてくれるかどうかはわからないという議論もあります。

●防災のために情報のネットワーク化を!(瀬川氏):
加古川最下流の加古川市は、河川整備の上で安全な状態にありません。その対応として、今後、情報のネットワーク化を充実していただきたいと思います。

Q 消えた霞堤(小東委員)
昔からあった霞堤が、耕地整備とか河川改修の中で姿を消していったことについてどのように考えておられますか。
C コメント

●「床下浸水」我慢できますか?(川谷委員):
霞堤のようなものをつくって遊水池機能を持たせるためには、浸水等によるある程度の被害を受け入れる寛容さか、諦めを持てるかどうかという問題につながり、沿川住民が被害を分担する体制をうまくつくらなければならないと思います。

●霞堤は加古川の歴史を語る(中瀬座長):
霞堤は文化財あるいは地域の郷土の歴史を残すものですので、みんなで協議しながら進めていただけると加古川の歴史を語る大事なものになると思います。

●残せるか?霞堤(那須委員):
近畿には、一定の補償をした上で土地の利用を制限して、そこを遊水池にしたところも現実にあります。これまでの時代背景を踏まえた上で、理解を得て、霞堤を整備することは可能かもしれません。

●川に関心を持とう!(一般聴講者・根本氏):
自分たちの川だという意識が流域の人たちに共有されると、いろいろなことが良い方向に向かうと思います。加古川も財産価値だけではなく、もっと文化のようなものも考えると良いのではないかと思いました。

●川の歴史や文学を見直そう!(吉田委員):
おっしゃる通りです。文学や歴史はほとんど踏みにじられてしまっている現状ですが、歴史や文学に携わる者の諦めがいちばんいけないのではないかと思います。


ありがとうございました。

話題はまだまだ豊富にありまして、表面的な議論だけかもしれませんが、今後もこのような議論を続けていくチャンスをつくっていただけることをお願いしたいと思います。

座長(中瀬委員)